活動紹介

ラーニングアナリティクス

ラーニングアナリティクス(Learning Analytics: LA) とは、情報技術を用いて、学生からどのような情報を獲得して、どのように分析・フィードバックすればどのように学習・教育が促進されるか?を研究する分野です。わたしたちは九州大学のラーニングアナリティクスセンターにおいて、これまで大学での教育・学習を対象にラーニングアナリティクスの研究を進めてきました。また、研究成果に基づく可視化ツールや学習支援ツールの開発にも取り組んできました。

生理計測による「学びのつまずき」推定システム開発

勉強中に「難しい」「理解しづらい」と言った「学びのつまずき」が生じることがあります。学習者がある課題に取り組んでいるとき、どの時点で「学びのつまずき」が生じたのかを推定できれば、適切な学習支援や教材改善につなげられる可能性があります。

脳・認知科学サブグループでは、学習中の脳波および視線運動同時計測により「学びのつまずき」を捉えることを目的とし、実験を行っています。

視線運動計測では、画面のどの部分に着目したのかを計測することができます。主に学習中「教材のどの部分でつまずいたのか」を推定するために使用します。本研究グループでは、Tobii Pro Spectrum (トビーテクノロジー株式会社)を用いて計測を行っています。

脳波計測では、時系列的な精神状態の変化(集中・覚醒など)を計測することができます。主に「学習中のいつ、つまずきに関連する精神状態変化が起きたか」を推定するために使用します。本グループでは、装着時の負担が少ないワイヤレス・ドライ電極脳波計Quick-20(Cognionics)を用いて計測を行っています。

世の中には脳波・視線の両方で様々なデバイスや計測ツールが溢れていますが、本研究グループで使用しているものはどれも学術研究に利用可能な計測精度を保ちつつ、計測中の負荷や拘束が少ない機器を採用しています。計測・解析担当者は生理計測を専門とする研究者であり、教育工学の専門家と連携を取りつつ研究を行っています。

高齢者向けLA環境のユーザインタフェース(UI)開発

今までの学習支援システムは、若い年齢層を対象にした応用が主流であり、直接高齢者向けに適用できないものが多くありました。高齢者の多くは、学習支援システムを利用するためのICTツールに関するスキルのレベルが若いユーザと比べてあまり高くなく、このようなシステムのUIや利用方法を学習するコストも比較的高いと考えられます。高齢者向け学習支援システムためのUIは、利用者の操作負担の軽減及び不安感・抵抗感の解消を考慮して設計する必要があります。わたしたちは情報機器の利用者である高齢の方向けに、ヒアリング調査やインタビューなどで意見聴取し、今までの学習支援システムのUIに高齢者の不安感・抵抗感を起こしやすい表示と操作を抽出しました。その過程で、画面の頻繁な切り替えや、階層数が多い画面や操作は高齢者向けUIに回避すべきことが分かりました。

以上の問題を踏まえ、わたしたちは「デュアルタブレットUI」を提案しました。具体的には、連動した2つのタブレットの主画面を教材閲覧専用に固定し、副画面は教材のプレビュー及びページ中のメモを表示とテキスト編集などの操作に限定しました。これにより、教材閲覧の妨げをできるだけ減らすことができます。利用者の操作は、タッチペンを主要な手段として想定し、マーカ・メモなどの入力が直感的にできるように設定しました。さらに、ボタンなどのUI要素の位置・大きさ・色遣い、及び連動した画面の対応関係等について、高齢者の視覚・記憶力の衰退などを考慮し、操作の負担を抑えるように設計しました。

提案したUIの初歩的実現と検討のため、汎用性と拡張性を考慮したクロスプラットフォーム環境で、プロトタイプ開発を行いました。開発プロトタイプは、ユーザ実験で高齢者に試用してもらい、形成的評価及び改良ための意見聴取を行っています。このような高齢者ユーザからのフィードバックと改善により、持続的改良とアジャイル開発を行いました。

地域連携

わたしたちは、福岡県糸島市と連携して、高齢者の学びや社会参加・雇用に関わる人々へのヒアリングや、地域の高齢者と直に関わり合いながら、講習会やフォーカスグループ、アンケート調査などを行い、ユーザ中心の立場から高齢者になじむ学習支援技術のデザイン・開発・評価・改良を進めてきました。さらに、学習アナリティクスを活用した学びによるエンパワメントや新たな共創の可能性を検討しながら、個々の技術だけでなく、利用環境全体を捉えつつデザインにフィードバックするための活動にも取り組んできました。

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